前置き | 1992年頃、大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージを多少書き換えた作品。オリジナルは「友達がいないと悩んでいる人へ」の続編として書いた。 |
友達がいないと悩んでいる人へ |
都内某一流大学でカウンセラーをしている私の元に相談に来る学生の悩みのトップは「友達がいない」であることは以前のメッセージでじっくりと説明したとおりです。 じゃあ二番目は、というと「自分は頭が悪い」という悩みです。 この悩みは何も大学生に限ったことではありません。一般の人々の中にも同じ悩みを持つ人はかなりいます。頭が悪いために出世できないサラリーマン。頭が悪いために子供から馬鹿にされているお母さん。頭が悪いために近所のガキからジャンボ鶴田の得意技だったジャンピング・ニーパッドを顔面に食らったオヤジ、などなど数え上げたりきりがありません。日本では、本当にたくさんの人々が自分の頭の悪さに悩んでいるのです。 そこで、今回は、この悩みの解決法についてインターネットをご覧の一般の方々にお話したいと思います。 まず最初に皆さんに考えていただきたいことは、「頭が悪い」ということは悪いことなのでしょうか。 そんなことは少し冷静に考えればすぐにわかることですね。 そうです。そのとおりです。悪いことです。極悪です。反省しなさい。 おっと、これを聞いて「とんでもない侮辱だ!」と憤慨している方がいらっしゃるようですが、ちょっと待って下さい。 私は「あなたが悪い」なんて、ひとことも言ってません。「『頭が悪い』ことが『悪い』」と言っただけです。決して「あなたが悪い」などといって、あたなを侮蔑してはいません。「頭が悪い」ことが「悪い」のです。 どうです。これで悩みも一気に解消しましたね。 小学校1年の1学期の終わりに初めて通信簿というものをもらって以来ずっと卑屈な人生を送っているあなた。 父親の転勤のため10回以上も転校したにもかかわらず、どの学校に通っても友達からつけられるあだ名が判を押したように「馬鹿」であるため、面倒だからといって市役所に行って苗字を「馬鹿」に変えてもらい、友人どころか先生にまで「馬鹿」と呼ばれるようになってしまったあなた。 「頭が良くなる薬」などあるわけがないことをわかっているけど、つい通信販売で毎月その怪しげな薬を買ってしまい、そんな胡散(うさん)臭い薬を飲んで腹をこわしはしないかと心配なために友人に10年間飲ませて試し続け、惜しい友を亡くしてしまったあなた。 「ニンジンを食べると頭が良くなる」という、どう考えても八百屋のインチキオヤジが勝手に言い出した宣伝文句を信じ、毎日3キロものニンジンを20年間食べ続け、食べ初めから5年後くらいには顔が馬づらになり、20年たった今では完全に馬の顔に変わり果て、自分がかつて人間だったことを誰からも信じてもらえなくなってしまい、ひとり馬小屋で八百屋のインチキオヤジを恨んでいるあなた。 皆さん、この私のメッセージを読んで気分がすっきりと晴れたはずです。 そうなんです。頭が悪いからといってあなたはしょげる必要はまったくないのです。 あなたは全然悪くありません。「あなたの頭」が悪いのです。 |
作者の コメント |
とある方より、「おまえは俺のことをしゃべったな」というお怒りの抗議メールをいただきました。丁重なお詫びメールを送っておきました。 このメッセージに対して掲示板では何のコメントもかかれませんでした。 (作者:フヒハ) |