前置き 1992年頃、大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージ

友達がいないと悩んでいる人へ

 私は都内にある某一流大学(名前は申し上げられません)でカウンセラーをしております。学生達からは絶大な信頼を得ており、カウンセリングルームに訪れる人は後を絶ちません。
 さて、私の大学で最も多い悩みの相談はずばり「友達がいない」です。
 一昔前だったらそんなのどうでもよいことだったんでしょうが、今では自殺したくなるほどの深刻な悩みのようです。
 友達がいないという悩みを持っている生徒は、どこの大学でもかなりいるようです。現在の大学生の最大の悩みといっても過言ではないでしょう。
 そんな悩みに対し、他の大学ではどのようなカウンセリングを行っているか知りませんが、私の大学でのカウンセリング方法を紹介してみようと思います。

 友達がいない、と深刻に悩んでいる人は非常に多いのですが、本当に友達がいないのでしょうか。実際には友達がいるのに、いないと思い込んでいることがよくあります。
 私の勤務している大学には中国人留学生が何人か在籍しております。そのうちひとりの男子生徒の名前は「友・達(トモ・ダチ)」と言います。
 私は、深刻な顔をして「友達がいなくて悩んでいます」とカウンセリングルームに相談にやって来る学生には、いつも、中国人「友達」の学生証のコピーを見せ、「これでも友達がいないなんて言えるのか」と反論しています。
 ウチの大学のほとんどの学生は、そんじょそこらの二流大学のアホ学生と違って、物事に対する理解が速い。「友達」の学生証をしばらくの間凝視した後、悩みが一気に吹き飛ぶのか、カウンセリングルームを飛び出していきます。
 その後、二度と大学に戻って来なくなるひねくれた人間も中にはいますが、多くの学生は1週間くらいは大学に来ます。

 中国人「友達」の学生証のコピーを見せられても納得しない生徒もいます。彼らは
「冗談はよしてください。本物の友達がいないのです」
と涙を浮かべて私に訴えかけます。
 そのような生徒に対しては、仕方がないので私は中国人留学生の「友達」をカウンセリングルームに呼び出し、本物を相談者に会わせます。
 決定的証拠を見せられ観念したのか、相談者は泣きながらカウンセリングルームを逃げるようにして出て行きます。こういった人達の中にも二度とキャンパスに現れなくなる人は多い。

 次に、非常に稀ですが、中国人留学生「友達」に会ってもまだ首をかしげるだけで帰ろうとしない学生がいます。そういう人には私は「友達」の友人である「保藻・達(ホモ・ダチ)」の携帯電話に電話をかけて呼び出し、相談者に紹介します。
 ここまで親身になって相談に乗ってあげて再びカウンセリング室に戻ってくる人は今のところひとりもいません。

 現在、何らかの悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、私宛にメ−ルでご相談ください。 大学カウンセラーとしての20年以上にわたる経験をフルに活用し、的確なアドバイスができるはずと自負しております。
 もちろん貴方の名前や相談内容は公にせず、プライバシーは最大限尊重いたします。どんどん悩みのメ−ルをお送りください。
 悩みがあるからといって自分の部屋に一人でこもり、ビデオなど見て一人で悦に入らず、喜びを私と一緒に分かち合いませんか。


作者の
コメント
寄せられた悩みのメールはたったの1通でした。内容は「先端に毛が生えていて悩んでいます」という何だかよくわからない相談でした。
他人に相談するならもっと具体的に、どこの先っぽに毛が生えているか言ってくれないと適切なカウンセリングなどできません。
ただ、無視して逆恨みされるのが怖かったので、この相談者には「頭の先端に生えているならみんな同じなので悩むことはありません。指の先っぽなら痛くないでしょうから、ひっこ抜いたらいかがでしょうか」と丁重に答えておきました。それに対する御礼の返事はありませんでした。
(作者:フヒハ)

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