前置き 1992年頃大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージ。

用を足しているときの音

  公衆便所で大便をしているときに一番気になるのはやはり「におい」と「音」でしょう。「におい」については次回改めて講義しますので、今回は音について話してみたいと思います。

  みなさん、とりわけ若い日本人女性は、用を足しているときに出てしまう音をトイレ内や外にいる人に聞かれまいとしていろいろと苦労なさっています。
  本来、排便は人間として必然的な行為であり、恥ずかしがることなんかまったくありません。アメリカやヨーロッパでは女子高生でもトイレでブリブリブリ!と豪快な音を立て、涼しい顔でトイレから出てきています。
  日本人が異常なのです。しかし、体から出てくる場所が場所ですし、出てくるものがナニですので、できることなら音を聞かれたくない、と思うのも無理のないことです。
  音を聞かれない工夫として日本では主に次の3つの方法が取られています。

1.用を足しているときに、レバーをひねって水を流す。
2.用を足しているときに、足元で大量の爆竹に点火する。
3.音の責任を他人になすりつける。

  日本ではこれ以外はまれです。
  それではこの3つをひとつひとつ順番に解説していきましょう。

1.用を足しているときに、レバーをひねって水を流す。

  水洗便所である限り、レバーをひねれば便器内に水が流れます。その流れの音というのは結構やかましいものです。この音により排便の音が外の人に聞こえなくなります。このやり方は手軽さからいって最もポピュラーなものといえましょう。便器内の水の流れが終了した後も、水溜タンクへ水が流れ込む音がしばらくは続きますので、継続という点からいっても申し分ありません。
  しかし問題がないわけではありません。排便の際に出る音があまりにも大きい場合には効果がないのです。
先日、こんなことがありました。新宿のとあるデパートでの出来事です。
  3階のトイレに入ったのですが、個室がいっぱいだったので順番待ちをしていたとき、いきなり「ドッカーン!」という物凄い音が鳴り響きました。地面も少し揺れたのではないでしょうか。
  トイレ内にいた人々はみんな何かが爆発したのではないかと察し、いっせいに身を伏せたのです。
  この轟音はしばらく続いた後、治まりました。静けさが戻ると、タンクに水が流れ込む音が聞こえ始め、ドアが開いて中年の男が個室から出てきました。
  相変わらず床に伏せて手で耳を覆っている人達を見て、男は
「いやあ、失礼。用を足すときの音がうるさすぎましたね。いつもこうなんです」
といって頭を下げました。
  みんなはやっと何が起こったのかが理解できました。中年男は排便音を消そうとして水を流していたのです。ところがその音がとてつもなく大きかったため(みんな爆発音と勘違いした)、水が流れる音なんかまったく聞こえなかったのです。
  この例からわかるように、用を足す時の音があまりに馬鹿でかい場合は、レバーをひねって水を流しても焼石に水なのです。
  それでは次の方法を検討してみましょう。

2.用を足しているときに、足元で大量の爆竹に点火する。

  昔の爆竹は今のものより太く、音も比べものにならないくらい大きいものでした。破壊力もあり、手に持ったまま暴発させてしまうとかなりの傷害を被ったものです。
  政府・自治体が事故を危惧して規制を強化したのでしょう。最近の爆竹はめっきり細くなり、音も威力も小さくなってしまいました。
  とはいえ、トイレのような静かな場所で爆竹を鳴らせば、かなりうるさいものです。大便をしているときに爆竹に点火すれば排便の音をごまかせます。
  工夫1で取り上げた中年男のように排便音が特別な人でも効果があります。普通の人だったら用を足すときの音を完璧に消音できるでしょう。
  ただ、問題点がひとつだけあります。爆竹音で排便音を聞かれないようにするという消音方法を知らない人がトイレにいた場合は、悪質ないたずらと勘違いして警察に通報してしまう可能性があることです。
  通報されると、あなたがトイレから出ると、警察官が待ち構えていて尋問してくることでしょう。
「お前はトイレの中で何をやってたんだ?」
  別にやましいことをしているわけではないので、排便音を他人に聞かせないために爆竹を鳴らしたと正直に答えましょう。警官にきちんと説明すれば問題はありません。
「そうですか。実は、僕もその音がうるさくて困っているんです」
  もしも警官がこのような悩みを打ち明けてきたら、残っている爆竹の一部を分けてあげましょう。
  警官は大喜びし、すぐさま効果のほどを確かめるため、大便を開始することでしょう。
  もしその警官が、勘違いして尻の穴に爆竹を挿入して火を点け始めようとしたら、正しい使用方法を教えてあげてください。

3.音の責任を他人になすりつける。

  第3の方法は「消音」とは異なります。排便の際に出る音は自然のものとしてあきらめ、そのかわり責任を他人に押し付けるという非常にスマートなやり方です。要するに隣の個室にいる人が出している排便音のように見せかけるのです。この方法でも自分が恥ずかしい思いをせずにすみます。
  個室と個室を隔てる壁の下は開いています(隙間があります)。その隙間を通して団扇(うちわ)や扇風機(せんぷうき)を使って自分が用を足しているときに出る不快な音を隣の個室に送り込んでやるのです。こうすることにより、たとえあなたがどんなに恥ずかしい排便音を出そうが、個室の外にいる人はあなたの個室から出している音とは思いませんので、あなたは正々堂々と個室から出ることができます。
  この方法には注意することがあります。隣の個室へは音だけでなく「におい」も一緒に送り届けられてしまいます。ですから、冷蔵庫の臭い取り防臭剤「ノンスメル」を壁の下の空間に置いてください。音は通過しますが、においはノンスメルに吸収されるため、隣の個室にいる人に降りかかる迷惑を軽減できます。防臭剤はエチケットとして必ず必要です。
  これで完璧と思えるかもしれませんが、隣の個室の人も排便の音を他人になすりつけようとあなたの個室に音を送り込んできた場合は少々厄介なことになります(ノンスメルを置くのはあなたか隣の人のどちらか一方で十分なので、相手が既にセットしていた場合はあなたの手間は省けますが)。
  あなたが扇風機(せんぷうき)、相手が団扇(うちわ)を使っていたら問題ありません。どんなに必死に団扇をあおいでも扇風機には勝てませんから。
  しかし、逆の場合はあなたは風力で負け、排便音の責任はあなたが負うことになります。
  両者とも扇風機(あるいは団扇)を用いていた場合は、扇風機の性能(あるいは力比べ)となります。
勝てないと思ったら、その勝負はあきらめるべきです。すぐに反対側の壁へと移動し、そちら側の個室に風を送ってやるのが正解です。つまり、後ろの個室の排便音に自分の排便音を上乗せして、2人分の音を一気に流し込むのです。
  これをやるときにもエチケットとしてノンスメルの設置を忘れてはいけません。


作者の
コメント
このメッセージを読んでメールを送ってくれた人の中に「排便音は肛門の振動によって発生するので、肛門を手で押さえておけば音をかなり軽減できる」とアドバイスしてくれた方がいました。
「肛門を手で押さえてたら便が出ないのでは」と返事のメール書いたら「あ、そうか」だって。
(作者:フヒハ)

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