前置き 1992年頃大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージ。インターネット時代に合わせて改訂した。

公衆便所のメッセージ

  以前にも書きましたが、公衆便所の落書きというのは、そのほとんどが卑猥な内容で、何を訴えたいのかさっぱりわからない意味不明なものばかりです。
  が、たまに他人へのメッセージが書かれていることがあります。
  その中には外人に向けたメッセージも多少ですが見かけます。
  しかし、前に書いたとおり外人は難しい卑猥漢字の入ったメッセージは読みません。というより読めません。
したがって公衆便所でよく見る定型の言い回し
「***がでっかい外人よ! 俺の***にそのぶっとい***をぶち込んでくれ!(***はすべて放送禁止用語)」
という文章は外人に読んでもらえていません。
  ですから、このような訴えをいくら書いても、***のまったくでかくない日本人にぶち込まれてしまっているのが実情なのです。
  このことからわかるように、どんなに魅力的、挑発的なメッセージを公衆便所の壁に書こうが、あなたの真の望みは外人には伝わらないのです。
  では、英語で書けばどうでしょうか。
  確かに英語のメッセージならば日本に在住あるいは滞在している外人に理解してもらえます。しかし、中学英語に毛が生えた程度の英語力をかつては持っていたが、いまではその毛も完全に抜け落ちてしまったというあなたの語学力では、先ほど挙げたような微妙なニュアンスを含んだメッセージを正確に書くことは絶対に不可能でしょう。
  それじゃあ翻訳家を雇えばいいじゃないか、と血相を変えて反論する方がいらっしゃるかもしれませんが、それでも難しいのです。
  普通の翻訳家では、さきほどの定型文ですら正しく訳すことができません。俗語や専門用語が含まれているからです。これは、原子物理学の中性子に関する論文をその分野の専門用語に精通していない普通の翻訳家が訳した場合のことを想像すれば容易に理解できます。とんでもない誤訳ばかりになるのは明白です。
  それでも何とかなるはずだ、と思っている方は、イエローページに載っている翻訳会社に片っ端から電話を入れ、卑猥な言葉の専門家がいるか尋ねてみて下さい。
  百社くらいに当たれば、一社くらいは、「どんな文でも完璧に翻訳できます」と答えるかもしれません。
しかし、それでも
「はい、私どもの翻訳会社は、特に猥褻な用語に強く、全社一丸となってスケベ分野の翻訳に力を入れております。弊社のベテラン社員Aは、その道の翻訳では日本の第一人者で世界的にも高い評価を受けております。ちょうどいまAが近くにおりますのでちょっと代わって本人から説明させましょう。切らないで少々お待ちください。Aさーん」「お待たせしました。はじめまして。私は『スケベ翻訳の世界的権威』といわれているAと申します。あなた様は、卑猥な語句を正確に翻訳できる者を探しているということですが、私は今までにお客様の***を私の***に挿入し、***をしゃぶりながら***を愛撫し、***を微妙なタッチでこねくり回し、やめてといわれながらも辛抱強く***を続けて絶頂を迎えていただき、『君は契約どおりの仕事を立派に遂行してくれた』といわれ、お客様からいつも感謝されております」とまで答えてくれるような超一流の翻訳会社はまずいないと考えるべきでしょう。
  となると、猥褻用語を専門としている翻訳会社を探すよりも、公衆便所で卑猥なことを書いている変質者の中から外国語の堪能な者を探すほうが可能性としては高いかもしれません。ただ、東京や大阪のような国際都市であっても外国語が堪能な変質者など滅多にいません。
  結局は外人へのメッセージは自分で書かなければならないのでしょう。
  途方に暮れてしまいますね。
  でもいい方法があります。英語ができなくても何とかなります。
  日本人が中国を旅行していて言葉が通じなくて困ったときどうしてますか。そうですね。漢字を紙に書いてそれを見せ合う、いわゆる「筆談」を行っています。漢字は発音の仕方が日本語と中国語で異なりますが意味は同じです。言葉は通じなくても筆談でコミュニケーションをはかることが可能なのです。
  以前の私のメッセージを読まれた方はもうおわかりですね。公衆便所での外人とのコミュニケーションには外人が理解できる方法「絵」を使うのです。
  普通は鉛筆やボールペンでなくマジックを使いますので「マジック絵談」といっておきましょう。
  絵もひとつだけでは伝えづらいので4コマ漫画のようにストーリーにしておくとわかりやすくなるのはいうまでもありません。
  それではみなさん、12色のマジック代850円以上のお金が財布の中にあるのを確認して文房具店経由で公衆便所に直行しましょう。


作者の
コメント
この頃はもう飽きられていたのか感想のメールをくれる人はおりませんでした。
私は以前から公衆便所に書かれた卑猥なメッセージをパソコン通信(今ならインターネット)の掲示板に転載してやろうと考えていたのですが、著作権法違反になりそうで恐いのでやってません。ああいうのにも著作権というやつがあるんでしょうか。
(作者:フヒハ)

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