前置き 1992年頃、大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージを若干書き直した作品。

トイレの紙がなかったら

 大便をしていざお尻を拭こうとしたけどトイレットペーパーが切れていた。
 こんな経験は誰でもしていますね。
 そんな場合にどうするか。人によって多少は異なるかもしれませんが、大体皆さん同じようなことをなさっているようです。
 最も一般的でオーソドックスなやり方は、みなさんもしょっちゅうなさっていると思いますが、靴下を犠牲にすることです。
 トイレットペーパーがないんだから何かで代用するしか手はありません。代用品としてはパンツやシャツなどの下着、ブラウスやワイシャツ、Tシャツ、背広、オーバーコート、ダウンジャケット、毛皮のコート、セーラー服など、何でもかまわないわけですが、皆さんはやはり一番安い靴下を犠牲にされているようです。
 さて、靴下でお尻を拭く場合にまず考えなければならないことは、靴下のどの部分を使うかです。
 一番理想的なところは踝(くるぶし)より上の部分です。靴下の足の裏やつま先の部分で拭くのは何といっても汚い。そして何よりも臭い。
 皆さんの中には、
「どうせ拭き取る対象はもっと汚くてもっと臭いのだから、どうでもいいじゃないか」と反論される方がいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
 人間の体はどの部分でも汗をかきます。足も例外ではありません。特に靴を履くと足の裏やつま先部分が最も発汗します。靴下は足を暖めるだけでなく、汗を吸い取る役割も果たします。そのため、吸い込んだ汗が乾くと、靴下の足の裏やつま先部分がパリパリに硬くなります。そんな部分で肛門を拭こうものなら、刺激が強烈です。トイレで悶えちゃうかもしれません。
 その点、踝(くるぶし)の上の部分は発汗が少ないため、靴下のその部分はソフトな状態が保たれます。また、この部分はさほど汚れることはないですから、便の拭き取りには適しているといえましょう。
 少人数に属するかもしれませんが、靴下の中に手を入れて、手袋のようにしてお尻を拭き、手先で大便の感触をエンジョイするという高尚な趣味を持ってらっしゃる方がおられます。そういう方々は大体、靴下なんか使うのは面倒だ、などと言ってやがては素手で直接触ることによってさらなる趣味の追求に没頭することになるようです。
 靴下を手にはめる、はめないにかかわらず、こういったやり方は、なかなか便が肛門から出ずに、仕方なくもぎ取り出す場合にのみ行うべきだと私は考えます。
 また、もっと少人数ですが、靴下を両手にはめて、ダブルの攻撃だ!などと訳の分からないことを言いながらお尻を拭いている方がおられます。そういう方々は完全に無視して話を進めたいと思います。
 靴下でのお尻の拭き方で、もう一歩進んだ先進的な方法があります。それは、靴下を足に履いたまま膝を思いっきり曲げて、アキレス腱の部分で拭くという非常におしゃれなやり方です。こうすれば靴下を脱ぐ煩わしさから開放され、手が自由ですので、あやとりなんぞをしながらでもお尻を拭くことが可能です。
 こう言うと、皆さんの中には、
「あやとりを持ってるならそれで『熊手』を作り、その熊手で肛門をふけばいいではないか」と思う方がいらっしゃるかもしれません。
 そう思ったあなたは鋭い。やったことがある人のみが思い付くその発想。頭が下がります。ぜひこれからも続けてください。
 さて、靴下を履いたままアキレス腱でお尻を拭くというのは非常にシックな方法ではありますが、普通の人にとってはなかなか難しいものです。
 やったことのない人は実際にやってみてください。
ちょっと待ちなさい!
 これは実験なのでパンツを脱ぐ必要はありません。早まらないでください。
 ま、でも、どうしてもと言うなら私は敢えて止めません。そのまま続けてください。
 さあ、どうですか。手を使って足のつま先のほうを引き上げないと、アキレス腱を肛門にくっつけることができないでしょう。
 素人では訓練が必要なのです。もしそれを手を用いずにできるとしたら、超難関といわれる中国曲芸団への入団もさほど難しくはないでしょう。びっくりするほどの体の柔らかさで世界中の人々を驚嘆させ続ける中国曲芸団において3年ほど修行を積めば、手を使わずにアキレス腱どころか、足の甲で肛門を拭くことも夢ではありません。
 ところで、スーパーで買った3足1000円の靴下を履いている場合には悩むことなくその靴下で肛門を拭くことができますが、もし、1足数千円もする高級ブランドRENOMAの靴下を履いていた場合はどうなりますか。
 その場合は、近所のディスカウントショップで買った東アジア製のパンツが犠牲になります。やはり値段が安いものを犠牲にせざるを得ません。パンツは敏感な皮膚に触れても刺激が少ない素材でできており、お尻を拭くものとしては靴下よりもはるかにお勧めです。また、パンツでしたら用を足すために足元まで下げておいたパンツを腰まで引き上げ、パンツの上から肛門部分を指でこすればそれで済みますので靴下に比べ楽といえます。
 ただし、パンツを使用した場合の問題点は、トイレを出た後、いわゆるノーパン状態になることです。靴下だったらしばらくの間履かなくても何とか我慢できるでしょうが、パンツをはかないと下腹部が気持ち悪くなります。
 自分のパンツに名前を書いている人がよくいますが、名前入りのパンツをデパートのトイレなんかでトイレットペーパーがなくてお尻を拭くのに使った場合は注意が必要です。
 肛門を拭いた後のパンツをトイレのゴミ箱にポイして、買い物を続けていると、やがて、次のようなアナウンスが聞こえてきます。

「ポンポンポンピーン。 お客様に、お忘れ物のご案内をいたします。 先ほど、6階のトイレでウンコのついたパンツをお忘れになった**様。血も混じっていますので、あなたは痔の疑いがあります」


作者の
コメント
このメッセ−ジに対してもメ−ルをいくつかいただきました。その中で私の心をぐさりと刺したのは以下のメ−ルでした。
「紙がなかったら、ふかなきゃいいだろ!」
まったく仰せの通りです。
(作者:フヒハ)

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