前置き 1992年頃大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージ。当時はデジタルカメラなど普及していなかった。

公衆便所の卑猥な落書き

  公衆便所内に書かれる落書きというのは、絵であろうが文字であろうが、一般的には猥褻(わいせつ)なものであると相場が決まっています。
  トイレに入って卑猥な落書きを目の当りにすると、大抵の人は思わず顔を両手で覆い、指の間からそのいやらしい落書きを熟視しています。中には、卑猥(ひわい)な文章をビジネス手帳に書き写し、家に帰ってから自分の部屋でじっくりとご覧になる方や、会社の社内ミーティング中に退屈しのぎのために手帳を広げて読み返すという方もいらっしゃるでしょう。
  さらにもう一歩進んだ方は、卑猥な文章をワープロソフト「一太郎」で入力し、卑猥な絵のほうを図形ソフト「花子」で書き移し、両方をひとつのファイルにドッキングさせるという難易度の高い技を使って、お手持ちのパソコンを最大限に活用されている方もパソコン通信なんかやっている奴の中には相当数いることがばれています。
  絵を描くのが下手な方は、ノート型パソコンを公衆便所に持ち込み、いかがわしい絵をマウスで直接なぞることにより、オリジナル作品の忠実な模写を行っておられることでしょう。
  しかし、マウスで卑猥な絵をなぞっているところを、パソコンとかマウスとかをまったく知らない人に見られたら、この人はその行為をどう正当化するのでしょうか。
  ましてや見ていた人が、「公衆便所に変質者がいる」という110番通報によって駆けつけた警察官であった場合なんかを考えると、今晩どころか数日間興奮して寝つけませんね。
  この文章を読んでおられるみなさんは、今後このような状況に直面することが大いに考えられます。
これから私が対策を述べますので、じっくりと頭に叩き込んでおいていただきたい。

公衆便所に描かれた卑猥な絵をマウスでなぞっているところを警官に見付かったときの対策

対策1:
  とりあえず落ち着いて、しばらくの間マウスで卑猥な絵をなぞり続けます。少したったら、卑猥な絵からマウスを離してこう言います。
「全然効かないじゃないか、この落書き消去器は!」
  警官によってはこれで納得して、派出所に戻ってくれる可能性があります。
対策2:
  まず、自分は異常なことはいっさいしていないんだと自分自身に言い聞かせながらマウスで卑猥な絵をなぞり続けます。そして公衆便所の前のパトカーを見て「何が起こったのか?}といいながら続々と集まってくる野次馬の数が増えるのを待ちます。
  野次馬が100人くらい集まったと気配で感じたら、左手で持っているノート型パソコンを床に置き、ポケットの中のハンカチを左手で取り出します。マウスを持っている右手とハンカチを持っている左手を上下左右に動かし、手旗信号を行います。
  手旗信号で伝えるべきメッセージは「この公衆便所の近くで人が殺されたと通報しろ!」という合図です。
  野次馬が100人もいればひとりくらいは手旗信号がわかるでしょう。そのひとが近所の公衆電話に駆け込み、110番通報してくれます。
  通報を受けた警察署は、公衆便所にいる警察官に無線で殺人事件発生を知らせ、現場に急行するよう指示します。命令を受けた警官は、右手にマウス、左手にハンカチを手にして、卑猥な絵が描かれた壁の前で手旗信号を行っている人のことなど相手にしている暇はないので、パトカーに向かって駆け出します。
対策3
  対策1、対策2の両方ともやってダメだった場合は、国歌でも歌う以外ないでしょう。


作者の
コメント
今はデジカメが普及したため絵の取り込みは簡単ですが、昔は大変でした。このメッセージに対しては、確か「あんたはそんなことやってんのか?」というお叱りのメールをもらったと記憶しています。
(作者:フヒハ)

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