前置き このフォーラムに書かれた感想文・批評を読んでいて思い付いたメッセージ。

やられた

 感想文、批評を読んでいると、ときどき「やられた」という言葉に出くわします。この「やられた」がどういう意味なのか皆さんはご存じでしょうか。知らない方もいらっしゃると思いますので、私がこの場を借りて説明いたします。
  誰でも分かるとおり「やられた」は「やられる」の過去形です。「やられる」とは知ってのとおり「やる」の受身形です。では「やられた」の原形である「やる」とはいったいどういう意味でしょうか?

 手元にたまたまある国語辞典で調べてみます。その辞典で「やる」を引くと、以下のように説明されています。

1) 前へ進ませる (例文:車を早くやってくれ)
2) 行かせる (例文:使いをやる)
3) 与える (例文:これをおまえにやる)
4) 他の場所へ移す (例文:本をどこへやった?)
5) 性交する (例文:あの女とやった)

 ここでわかるように「やる」には5つの意味があります。では「やられた」の原形である「やる」の意味はどれでしょうか。難しいですね。5つとも当てはまるように思えるし、全部違うような気もします。考えれば考えるほど迷ってしまいます。
  こういった場合はどうしたらよいでしょうか。学生時代の試験を思い出してください。
マークシート(選択)方式の一攻略法として「消去法」があります。初めから正解ひとつを探し当てるのではなく、明らかに間違っているものを消去していき、最後に残ったのが正解と判明する画期的なやり方です。正解が分からないときによく利用される王道です。
 それではこの消去法を使って正答を導き出してみましょう。
 まず、1)の「前へ進ませる」を考えてみましょう。これじゃありませんね。感想文に出てくるような意味ではありません。論外です。
  2)の「行かせる」はどうでしょうか。まったく関係ありませんね。
  それでは3)の「与える」はどうでしょうか。やっぱり違いますね。
  そうすると4)の「他の場所へ移す」ですか。そんな訳ありません。感想文とはまったく関連性のないものです。
  これでもうわかりましたね。正解は5)の「性交する」でした。

 ここで「性交」とは、普通、互いの同意のもとに行われるもので、「やる」「やられる」といった部類のものではないのではないか、と疑問に思われる方もおられるかもしれません。頭のいい方はもうお分かりと思いますが、そうでない方のために説明しておきます。この場合の「性交する」とは「一方的な性交をする」つまり「犯す」という意味なのです。
  これでやっと皆さんは、感想文や批評の中で見られる「やられた」というのが「犯された」という意味であることが十分に理解できたと思います。

 ただ、皆さんの中には、「男が書いた感想文や批評の中にも『やられた』が出てくるが、変ではないか?」という疑問を持つ方もがいらっしゃるかもしれませんので前もって答えておきます。

  変ではありません。ホモセクシャルが社会に認められつつある現在、どこが変なのですか。変なのは時代遅れのあなたの感覚です。

  また、「感想文の中で『やられた』はよく見かけるが、『やった』というのはお目にかかったことがない。どうしてだろうか?」という疑問を抱く人がいるかもしれないので、これに対する答えもあらかじめ書いておきます。

  「やられた」と公表してもせいぜい同情されるだけですが、「やった」と宣言するとなると暴行罪で警察に逮捕される可能性があるからです。

  もうひとつ、「感想文や批評の中で『やられた』を連発している人は、どうして『やられまくった』という便利な表現を使わないのか?」という疑問にもお答えしておきましょう。

  たとえ自分の意志でそうなったのではないにしろ、やっぱり恥ずかしいのです。


作者の
コメント
このメッセージに「やられた!」という尊い感想をいただきました。
(作者:フヒハ)

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