前置き もう惰性で書いている。

温泉旅行

 「彼女」を小脇に抱えながら老舗旅館に入ると、入口で出迎えた女将に「お、お、大人1名様の、ご、ご宿泊ですね?」と震える声で尋ねられた。
 俺はいつも自宅の布団の上でやっている行為を「彼女」と開始し、「こういうことは一人じゃできないでしょ」と答えた。
 すぐに呼ばれた警備員数人に我々はつまみ出された。
 俺を抱えた警備員達の顔は怒りに満ちていたが、「彼女」を運び出した警備員の顔はやけに神妙だった。






無名旅館

 老舗旅館からつまみ出された「彼女」と私が次に行ったところは老夫婦だけでやっているこじんまりとした無名旅館だった。
 80歳を越えていると思われる老女将は「彼女」を見て、「まあ、可愛らしい奥様ですこと」と、お世辞を言ってくれた。
 部屋に案内されたときにも、「先にお食事になさいますか、お風呂に入られますか、それともその前に一発?」と聞いてくれた。
 大型老舗旅館にはない気遣いが嬉しかった。






残尿感

 「彼女」と事を開始して数分後、襖(ふすま)が1センチほど開いたことに気付いた。

 老女将が覗いているのだ!

 見られているとわかると、それまでは傾きの小さな一次方程式y=0.1x+1の直線をなぞっていた快感のボルテージは、いきなり二次方程式y=8x2+3x+1の放物線を描き始め、まだ早いんだ!と必至に堪える俺の努力むなしく数秒後に一気に果ててしまった。

 ひどく残尿感が残る情交だった。






温泉風呂

 「彼女」を男湯に入れるわけにいかないので、ちょうど女湯に入ろうとしていたOL風の若い女性達に「彼女」の世話を依頼してみた。
 全員、猛ダッシュで逃げた。
 浴衣を着ているとは到底思えない見事な走りっぷりだった。






名答

 「彼女」を女湯に連れて行ってくれる人が誰もいなかったので頭にきて男湯から女湯側に「彼女」を投げ込んでやった。

 それまで女湯から絶え間なく聞こえていたしゃべり声は一瞬にして途絶えた。

 数秒後、小さな女の子の声が聞こえた。
「ねえママ。 あれ何?」

 ママはすぐに答えた。
「おっきなお人形さんよ」

 的確で無難な回答だと感心した。






ダンボ

 ママの機転の利いた答えで難局はなんとか切り抜けたと思われたが、女の子の次の意外な発言で再び女湯に緊張が走った。

「うちのパパも持ってるよね、ママ?」

 その質問に対するママの返事を聞き逃すまいと、男湯にいた客達の耳はダンボのごとく拡大した。






ママの回答

「違うわ」
 注目のママの回答が始まった。
「パパが書斎の本棚の裏に隠しているお人形さんは青い目をした金髪で、私達が留守の時、パパはそのお人形さんにスチュワーデスの制服を着せ、自分はパイロットの格好をして奇声を発しながら後ろから豪快に襲いかかっているのよ」

 ダンボの耳をした人々は同じことをつぶやいた。
「そんなことまで聞いてない」


作者の
コメント
書くのに飽きた、というよりネタが尽きたので止めた。また、復活させるかもしれない。
このシリーズに対してはいくつかの賞賛のコメントをいただく。
(作者:フヒハ)

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