前置き 1993年頃、大手パソコン通信ネットの掲示板に書き込んだメッセージで、内容をインターネットの時代に合わせて書き直した。

インターネットでナンパする
  インターネットで恋人を見つけた、という話をよく耳にします。そこで自分も同じ事ができるのではないかと考え、ナンパを目的としてパソコンを購入された方もたくさんおります。
  しかし、生まれつき恥ずかしがり屋さんのため、パソコンを買ったのに今まで一度もナンパを実行することができずにいる方が数多くいらっしゃいます。非常に気の毒なことです。
  そこで今回は、そういった不幸な方々のために一肌脱がせていただくことにいたしました。みなさんが私のメッセージに感化されて一日も早く一人前のインターネットナンパ師になってくれることを心からお祈り申し上げます。


  現在、あなたは私が書いたこのメッセージを読んでいます。あなたが見ているのはノートパソコンの液晶画面かもしれませんし、デスクトップパソコンからは分離したディスプレイモニターの画面かもしれません。いずれにしろ、パソコンを購入したからこそ、こうして今、あなたはこのメッセージを読むことができているのです。パソコンを買わなかったら絶対に読めないのです。当たり前のことですが非常に重要なことなのです。
  パソコンを手に入れるためにいくら支払ったかを思い出してください。最近では昔に比べかなり安いパソコンが売り出されるようになりましたが、それでもみなさん、大枚を投じています。なぜ、それほどの出費をしたのですか。思い出してください。
  あなたは、企業の宣伝のホームページを見るために給料のほとんどをつぎ込んで、苦しい生活に耐えているのですか。
  違いますね。
  あなたは、掲示板に書かれた数多くのくだらないメッセージを読むために、ボーナスをはたいて、それでも足りないからサラ金に手を出してしまったのですか。
  これまた違いますね。
  あなたは、マイクロソフト社のエクセルを使って円グラフを描くために自宅を売り払い、駅で寝泊まりしているのですか。
  そんなことはないですね。
  そうですね。ナンパをして恋人を見つけるためだったのですね。
  もう一度初心に返ってください。パソコンを買う以前の純粋な心を取り戻してください。
  18世紀のフランスの思想家ジャン・ジャック・ルソーはこう述べています。
「自然へ帰れ」
  ルソーの言ったことはこの文章とはまったく関係がなかったかもしれませんが、とにかく私が声を大にして言いたかったのは洋の東西、時代を問わず、ナンパをするときは、素直になり、邪悪な心を捨てろということです。
  ナンパを目的としてパソコンを購入したら即座に掲示板にナンパメッセージを書き、素直に女の子にナンパメールを送る。このような自然な振る舞いが女性の好感を呼び、その後のナンパのプロセスを容易にするのです。

  どうです。頭の回転が速い方は、もうすでにこのページからとっとと離れ、出会いの掲示板へと乱入し、女性のメッセージを血まなこになって検索しているはずです。
  従って、まだこのメッセージを読んでいる方は、頭の回転が遅い、とは言いません。鈍いのです。
  このうじうじしたはらわたの煮えきらない態度が、ナンパメールを送れない一番の原因なのです。
  さあ、みなさん。勇気をふりしぼってください。やればできます。
  それでは、みなさん。インターネットの出会いの掲示板をナンパメッセージで埋めつくしましょう。
PS:
このようなメッセージを私が書いたからといって、私がナンパなんかに興味があるなどと、邪推しないでください。私は、ただ単に、やろうと思ったことを実行しない典型的な日本人の悪い癖を腹立たしく思ってるだけです。
ただし、インターネットナンパに本当に成功したときはその手口をちょっとだけでもいいから教えてね。お願い。

作者の
コメント
掲示板では何のコメントもなく、メールもまったくいただきませんでした。
(作者:フヒハ)





インターネットでナンパする(その2)
 今回の講義は数日前に掲示板に書き込んだメッセージ「インターネットでナンパする」の続編です。まだ掲示板から削除されていないはずですので、読まれてない方はまずそちらをご覧ください。

  さて、前回の私の講義はいかがでしたか。
その講義を真に受け、この数日間は、多くの方が多数の出会いの掲示板に乱入しまくり、また、莫大な数のナンパメールを送りまくったことと思います。皆さんの中には、キーボードの叩き過ぎで肩の関節をはずされた方や、48時間ぶっ続けでパソコンに向かっていたために過労から意識を失い救急車で病院に運ばれ、現在も入院中という方もいらっしゃることでしょう。
  その執念が大切なのです。多少の不運にめげることなく、これからも頑張り続けてください。
  ところで、私のメッセージに刺激され、今まで何百、何千というナンパメールを送っているのに女の子から一通たりとも返事のメールをもらったためしがない、と嘆いている男性もかなりいらっしゃることと思われます。その原因がどうしても分からず、首をひねりすぎて首筋の筋肉を断絶された方も大勢いらっしゃることでしょう。
  そこで今回は、こういった可哀相な方々のために、インターネットナンパのコンサルタントをしている私が、考えられる原因を明らかにするとともに、その解決策をお教えいたします。


多くの女性に大量のナンパメールを送っているのに返事がもらえない原因は、以下の2つしか有り得ません。

(1)ナンパメールの内容に問題がある
(2)女の子からの返事を読む前に削除されている

それでは順番にその対策を考えてみます。

(1)「ナンパメールの内容に問題がある」

 もう一度、自分がいつも書いているナンパメールの内容を読み返してみてください。
よくある例では「君に会いたい」だとか、「一緒にホテルに行こう」だとか、「今晩一発どう?」といった非常にいやらしい語句、イディオム、格言、聖書の一節などがメールの本文に入ってしまっています。これでは勘のいい女の子だったら「この人、私をナンパしようとしてるんじゃないの?」と疑いの目を向け、警戒心を持たれてしまいます。
  初めてのメールでのこのようないかがわしい表現は、女性が最も嫌うものです。こういった露骨な文章を見ると女の子はメールを読むのを途中で投げ出し、すぐさまメールを削除してしまうのです。たとえそのような下心があなたの本心であったとしても、ストレートに書くことは好ましくありません。ちょっとした工夫が必要です。
  では、どうすればいいでしょうか。上記の例でしたら、例えば、「あなたとミートしたい」だとか、「ホテルにレッツゴー・トゥギャザー」だとか、「今晩ワン・ファック、オーケー?」といった英語を随所にちりばめてはいかがでしょうか。こうすることによって、メールに文学性を持たせるだけでなく、英語に過大なコンプレックスを抱いている日本女性の心をグラリとさせ、抵抗もできずにあなたに引きつけられることでしょう。
  自分で書いた文章というのは何度見直しても、なかなか悪いところが見つからないものです。ですからナンパメールを両親、学校の先生、会社の上司、Z会などに添削してもらうことをお勧めします。

(2)「女の子からの返事を読む前に削除されている」

  家族、とりわけ兄、お父さん、おじいさんといった男連中に身内だからと安心してメールアドレス、パスワードを漏らしてはいませんか。心当たりがあるならば、あなたが毎日メールを読む前に誰かに読まれてしまっている可能性があります。彼らの毎日の様子を厳しくチェックしてみてください。
  最近、兄が彼女を頻繁に替えてるだとか、お父さんの帰りがやたらと遅くなっただとか、おじいさんの指が腱鞘炎になった、といった普段と変わったことがあった場合には、まず間違いなくメールを盗み読みされ、削除されています。
  兄が彼女を頻繁に替えているのは、あなたがものにできたはずの女の子を兄が横取りしまくっているからです。普通の生活をしていて多数の女の子としょっちゅう知り合いになれるというのは、ホストをしているならいざ知らず、考えられません。兄はあなたがナンパメールを送った女の子の返事を失敬してうまいことやっているはずです。
  そうではなくて、もしお父さんの帰りがやたらと遅くなっていた場合は、父が真犯人です。遅くなった理由は、父があなた宛ての女の子からのメールをかっさらい、何回かのメール交換によって待ち合わせ場所を決め、そこにしげしげと通っているからです。父が家に帰ってきたときの表情に注目してください。感情を表に出しやすいタイプの人だったら、「私は若い女とやりました」と顔に書かれているのですぐに分かります。
  もし、おじいさんの指が腱鞘炎にかかった場合は間違いなく彼が犯人です。腱鞘炎になったのは、慣れないパソコンのキーボードの叩き過ぎが原因です。家族には「年には勝てない」ともらし、病院に行くと言っておきながら、新宿のアルタ前であなたと付き合える可能性のあった女性と密会しています。
  とまあ、兄、父、じいさんのいずれかに上記のような変化があった場合には、犯人は自ずと明らかになりますが、困ってしまうのは3人とも同時に上のような変化が見られた場合です。誰が犯人だか分かりません。徹夜して一晩中コンピューターの見える場所に隠れ、犯人を突き止めることも可能でしょうが、後々、おとり捜査とみなされる可能性があり、裁判に持ち込まれた場合非常に不利になります。
  そこで、このような場合には以下のことを行ってみてはいかがでしょうか。まず、今までに掲示板、メールマガジン、メール交換などで知り得たホモの方々に「是非ともお付き合いしたい」という旨のメールを送ります。しばらくたって兄、父、おじいさんにどのような変化があったかを観察します。
  兄が彼女を頻繁に替えるのを止め、以前に付き合っていた彼女とステディーな関係に戻っていた場合は、兄が犯人とわかります。
  お父さんの帰りが突然早くなり、夕食の食卓で「家族を大切にすることが、父親の勤めだ!」などと、それまで聞いたことのないことを突拍子もなく言い出したら、お父さんが犯人です。
  そして、おじいさんの指の腱鞘炎が治り、それと入れ替わりに肛門が切れ痔になったといって病院に通いだしたらおじいさんが犯人です。
  では、もし、兄が以前に付き合っていた彼女とステディーな関係に戻り、お父さんの帰宅が突然早くなり、おじいさんの肛門が切れ痔になって病院に通いだしたら、誰が犯人でしょう?
その場合は、犯人探しはあきらめ、家を出て一人暮らしをされることをお勧めします。

作者の
コメント
このメッセージを読んだ人から、「兄と父が25年前にヨーロッパに行ったきり、まだ帰ってこない。どうすればいいか」という旨のメールをいただきましたが、私がどうしてそんな相談にのらなければならないのでしょうか。
(作者:フヒハ)

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